自然の中の事象を記述するために、物理では“座標”というものを使う。
この“座標”と時刻を指定する“時間”を決めるとこの二つのセットで“基準系”となる。
物理で事象を記述するために無数にある“基準系”の中でも自分たちが基準として使う“基準系”が必要である。
しかし、この“基準系”で記述した物理法則がその他の“系”では全く使い物にならないものであれば、物理は役立たずもいいところの学問となる。
経験的に自由運動(力を受けずに運動)している系は慣性系と呼ばれ、慣性系同士で自然法則は同一であるという相対性原理が成り立つ。つまり、ある慣性系で自然法則を記述した式は、別の慣性系の座標と時間を用いても同じ形となるのである。
相対論といったら、やはり有名なアインシュタインの相対性理論だろう。
光速度不変の原理、時間が遅くなる、物が短くなる、などの現象も有名だ。
とはいっても、実はガリレイの考えた相対性原理もある。これは考え方としてはとてもわかりやすい。
まず、アインシュタインの相対論を理解するために、ガリレイの相対性原理を考えてみよう。
ガリレイの相対性原理に深い関係のあるガリレイ変換をまず考えてみよう。
ガリレイ変換は二つの慣性系(速度一定か、止まっている系)でそれぞれに固定されている座標で位置を表すとどうなるか(変換の法則がどうなっているか)、というわけである。
慣性系Sからみてx方向に速度vで移動するS'への座標変換を考えよう。
Sの座標を(x, y, z)、S'の座標を(x', y', z')としよう。そうするとSからみて時刻t=0で(x, y, z)=(x', y', z')だったとすれば、時刻tでのSとS'との関係は
x'=x-vt、y'=y、z'=z
となる。
これはまさしく不思議さも何もない考え方である。実体験にのっとっているともいえる。
ただし、これにはもう一つ付け加えるべき式が隠れている。
それは
t'=t
という式である。この式が表すことは「時間の進みかたは系によらない」という絶対時間の考え方である。
以上でガリレイ変換は終わりである。別に対して難しくもない。
経った時間と速度を掛けたらその物体が元の位置からどこまで行ったかが分かる、と言っているだけである。
そしてガリレイの相対性原理は、「ガリレイ変換で変換する全ての慣性系で物理法則は変わらない」というものである。
この程度の事柄に時間を割いた、と思う人もいるだろうが、これはアインシュタインの相対性原理をより深く考える上で重要なものである。
次回からは、アインシュタインの特殊相対論に入っていく。