空孔理論

負のエネルギーと反粒子、および真空についての話。

ディラック方程式が正しいものとして、議論した場合に最も初めに現れる問題点としては負のエネルギー状態というものである。

負のエネルギーをもつ自由粒子は物理的解釈が困難であり、負のエネルギー状態に正のエネルギーの自由粒子が落ち込んで、安定な粒子が存在しえないという問題がある。

この問題を解決するために、ディラックは「負のエネルギー状態は、既にすべて粒子が占有している」ものとした。
するとパウリの排他律により、正のエネルギーを持つ粒子は負のエネルギー状態に落ち込むことはできず、正のエネルギー状態で安定となる。

この仮定では、真空は何もない状態ではなく、負のエネルギー状態がぎっしり詰まった状態ということになる。

さらに真空にエネルギーを与えると、負のエネルギー状態にある粒子が正のエネルギー状態に励起され、負のエネルギー状態に"孔"ができる。
たとえば粒子が電子であれば、この"孔"は電子が電場にひかれて負の方向に移動すると、電子の移動につれて"孔"(正孔)は電場に対して正の電荷をもつ粒子のようにふるまう。
そして正孔に電子を詰めれば真空状態になるので、この正孔はエネルギー、運動量、スピン成分、電荷などすべて電子と逆になる。

この正孔は正のエネルギーと正電荷をもった正常な粒子として観測される。
これが反粒子(陽電子)である。

つまり、真空に十分なエネルギーを与えると粒子・反粒子の対が生成でき、粒子・反粒子対消滅すると純粋なエネルギーになる、ということである。

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