カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで
- 作者: 市谷聡啓,新井剛
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/02/15
- メディア: Kindle版
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カイゼン・ジャーニーを読み終えました。
というわけで読後の感想を書いていきます。
今回は何のプラクティスが紹介されているとかではなく、全体的な内容について書いていこうと思います。
単にアジャイルをやるのが、この本の本質ではない
読みながら感じていたことの1つがこれでした。アジャイルという以上に「カイゼン」というところが大きいと思います。
本の最初の方に出てくる言葉
「それで、あなたは何をしている人なんですか?」
これに対してどう答えられるのか。改善したいことがあるということはそこに問題があって、問題があるということはプロジェクトにおいてより早くより安全により高い価値を提供できないということを意味するでしょう。つまり誰かが改善しなければならないわけです。
この言葉は個人的にずっと考えていることと合致していました。自分が問題に感じたことは、誰かが動いてくれるのではなく自分が動くべきで、誰かが変わるのではなく自分が変わるべきなのだ、と。ですが、やれたことやれていないことの両方があるなかで、真正面から「それで、あなたは何をしている人なんですか?」とこの本に問いかけられたことは強い衝撃でした。自分は本当に行動できていただろうかと考えました。
まさにこれによって「カイゼン・ジャーニー」のスタート地点に立つのだと思いました。そこでアジャイルの知識を元に進んでいくのがこの本ですが、プラクティスやアクティビティのやり方だけでなく、より深い本質も感じ取れるように書かれています。
「それで、あなたは何をしている人なんですか?」
この言葉でなにかを感じた人は、とりあえず読んでみるとよいかと思います。
Whyから始まる
アジャイルの本としてこの本を見たときに感じたのは、Whyから始まっているなということでした。
仕事でもよく「なぜやっているのかから見直しましょうよ」とか「それの理由ってなんですか?」と言っている自分としてはすごく理解しやすく、また新しいプラクティスの導入の流れとして適切だと感じました。
アジャイルを始める際に「よさそうだからプラクティスをとりあえず導入する」というのがいわゆる失敗パターンの定石のようですが、意外と「問題が出た」=>「なぜ問題が出たか」=>「改善するために〇〇をしよう」=>「改善した」という流れで書かれている本は多くはないと思います。この本はその流れをしっかりとくんでいます。ここが非常に良いと感じました。
ちなみに本の中でも「Whyから始める」というゴールデンサークルの話が出てきます。本自体が紹介しているプラクティスに則っているというのは非常に好感が持てました。
ストーリーを通じて、原理・原則を感じられる
ストーリー仕立てになっていて、主人公の江島くんの開発中に起こる問題をどのように解決していくかを読み進めていく形になっているこの本で、読んでいるうちに「どこから始まっているか」「何を中心としているか」「どこに行き着くか」というのが繰り返し同じ形で自然に出てくるようになっています。これによって原理・原則が説明されただけでは理解できない部分まで感じ取れるようになっています。読んでいく中でこの辺りはすごくよく練り込まれた本だと思いました。
どんな原理・原則が練り込まれているかは読んでからのお楽しみというところでしょう(ここで言葉で簡潔に書いても、本を読んで得られることからは程遠いと思いますし)。
ちょっとむずかしいところ
最後に、この本で難しいところだと感じている部分について書いておきます。
解決の方向性として、基本的にはスクラムやアジャイルプラクティスがベースとなっています。一方でプロダクトオーナーなど文章中には出てくるものの、深くは説明されない用語も出てきます。これは仕方のないことですが、このあたりで引っかかってしまうとこの本のテンポの良い、問題 => 改善 => 解決 のループを感じ取れないこともあるかもしれません。
スクラム(の用語)に詳しくない人はあまり1つ1つ用語を理解することに最初はこだわらない方が、この本の良さを感じられると思います。そして二度目に読むときにスクラムとはなにかというところまで理解しながら、じっくりと読んでみると良いと思います。
まとめ
この本は、個人的にはおすすめしたい本の1冊となりました。本としても300ページほどで非常に読みやすくまとまっています。
「問題に感じているが変わらない、変えられない」と思っている人、「何から始めたらいいのかわからない」と思っている人には特におすすめです。また日本らしい分業化された開発を元にしているため、主人公に共感できると感じる人も多いと思います。
知っているプラクティスなども確かに多かったのですが、一度読んだだけで終わるのはもったいないのでなにかあるたびに開き直して「カイゼン」してみようと思います。