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エンジニアリング組織論への招待を読んだ

エンジニアリング組織論を読み終えたので感想を書いていきます。

組織におけるエンジニアとはなにか

著者の経営学、哲学、心理学などの様々な知識をもとに、組織におけるエンジニアとしてのどのように思考し振る舞うかについて著されています。コードを書くことだけのプログラマーから、エンジニアとしてメンター、リーダー、上司としての振る舞いを求められるようになっていく際に必要となる思考についてが書かれています。

この本における中心として、「不確実性に向き合う」というのがあります。「解決方法として正しいのか」「スケジュールは間に合うのか」「部下・上司・連携チームや組織はきちんとやってくれるのか」といった様々な不確実性にどのように対応すべきか、そしてそれらに対応するための考え方としてのアジャイルに触れていきます。

なかなかこれほどエンジニアリングと経営学、哲学、心理学などを織り交ぜて書かれた本は無いので、組織に対するエンジニアリングについてより幅広い知識からの理解を深めることができるようになっています。

人間の認知バイアスを理解し、個の問題から組織の問題へ

認知・社会心理学などの現代的な心理学で、認知バイアス(人間の認知の無意識による誤り)というものが知られています。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが深く関わっているため、書籍等で知っている人も多いかと思います。一方、これらの心理学で知られた認知の誤りとエンジニアリングや組織論を結びつけた知識は、なかなか書籍としては見る機会が少ないかと思います。

これらの認知の問題についていかにして、組織でのエンジニアリングに生かすかということが思考、メンタリング、開発、組織そしてアーキテクチャという視点でまとめられています。この書籍では、個の問題の多くが組織がはらむ問題から帰結するものである可能性を指摘しており、それにいかに把握し解決へと向かう道筋が読むことで見えてくるのではないかと思います。

まとめ

個人的には小難しい内容となり過ぎず、また300ページというページ数の中に、アジャイルや組織運用の本質を探る貴重な知識が散りばめられていたかと思います。個人的には「(制約)スラック」という単語を見て、「ああ、これが理想工期で表せないなと感じていた部分に当てられる言葉なのか」と腑に落ちました。

組織の中で先輩やリーダーとして問題を感じるようになっていく中でこの書籍を読むことで、問題に対する思考や対応を様々な視野、視座、視点で行うことができる基礎になると思います。ぜひ後輩や部下を教える立場にある人、リーダーシップを発揮する必要がある人、組織の中で問題を発見し解決する思考や視点を持ちたい人におすすめしたいと思います。